きっかけ
日本一の金仏壇を作る?
ある時彼から、近い将来日本一の金仏壇を作ろうと思うがどうだろう?との相談がありました。
彼の決意と行動力に驚かされながら、私は大賛成でした。あの時の意気込みは尋常ではなかったようなことを覚えています。
今思えば、そんな頃、彼自身の体がガンという病魔に侵されていくことと、関係があったのかもしれません。
これからお話します彼というのは小学校の同級生で材木商の長男でした。お互い社会人として、又二代目として修行中の頃、彼はよく言っていました。将来は実家の良い木材を使って、良い品質の仏壇を作り販売も手がけていきたいと。小生は寺院用仏具製造をメインとして、彼の家から良い木材を仕入れる関係で、よく酒を酌み交わしながら、将来の夢など語り合ったものです。これはそんな彼が追い求めたお仏壇の物語です。
ある時彼から、近い将来日本一の金仏壇を作ろうと思うがどうだろう?との相談がありました。
彼の決意と行動力に驚かされながら、私は大賛成でした。あの時の意気込みは尋常ではなかったようなことを覚えています。
今思えば、そんな頃、彼自身の体がガンという病魔に侵されていくことと、関係があったのかもしれません。
木地師、彫刻し、塗り師、金箔師、彩色師、金具師、蝋色師、組立師。彼は、それぞれの分野の第一人者に夢を語り続けました。全ての方に理解して頂くまでには、かなりの年月と労力をかけていた事を思い出します。
これだけの大作を制作するに当って苦労したのは、一流の職人さんの確保だったそうです。8職あるそれぞれ8社の職人さんに、自分の思いを語り、共感してもらい、仕事をはさみ込んでもらうのに、何ヶ月も時間をかけていたことを、思い出します。小生の所へもよく、お茶を共にしながらそんな話を愚痴一つこぼさず、目を輝かせて話してくれていました。また、彼のすごいところは、注文があってこの大作に取り掛かったのではなく、自身の志だけで作ってしまった資金面も含めた実行力です。そう簡単に真似のできることではありません。
完成した金仏壇は、両横後ろまで開く超最高級の本宮殿式、御拝造りの超豪華荘厳なお仏壇でした。
43号 総開き本宮殿御拝造り 脇台付き
サイズ | 幅135(開いた状態:300)× 奥行120×高さ219cm |
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金額 | 77,700,000円 |
金額内訳 | 仏壇:65,000,000円 仏具:12,700,000円 |
一般的な最高級として、三方開き、本宮殿式というのがありますが、このお仏壇は超最高級で両横が後ろまで全部開くことの出来る総開きとなっており、本宮殿式に加えて、お寺の内陣と同じ様な御拝造りとなっております。お仏壇だけの部屋が必要な位、超豪華荘厳なお仏壇です。
▲本式格天井の総金具打ち。お寺の内陣と同じ本宮殿造り(総金<具打ち)欄間の裏表共豪華な手掘り彫刻入り。
▲お寺と同じ造りで、正面2本の太い丸柱の後に障子扉が開閉されます。側大扉は 三方開きと違って惣開きですので、横の後ろ一杯まで開くことが可能です。
▲引き出しもまくり形式で正面3杯あり収納能力があり、機能性があります。左右には飾り彫りが施されています。
▲お寺宮殿須弥壇と同じ造りとなっております。須弥壇の彫刻も厚板龍彫りで、立体彫りの迫力に圧倒されそうです。
▲横から見た総開きの特徴です。横側が総て開き、その内側も正面同様障子があります。
しかし残念ながらそれを見届けて安心したのか、彼は50代後半で人生の幕を閉じてしまいました。
小生は、彼の仏壇に対する真摯な取り組みに敬服すると同時に、彼の意思を引き継いで、後世につないでいく使命さえ感じました。特にこの仏壇は、世界に誇れる日本の伝統美術工芸品としても価値あるものと思います。こうして伝えることで、400年前から脈々と育てられてきた伝統工芸が仏壇産業として発展してきたのです。
彼の最後の大仕事に関わった職人やスタッフの心意気と、誇れる技を国内外の一人でも多くの方々に見て頂くことが、彼への友情と考え、ネットで発表させて頂くことになりました。そして将来は国宝級にもなり得る位の職人技を目指して、次世代の若者に世界を見据えた夢と希望をこの仏壇実績を持ってエールを送っていきたいと思っています。